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2009年3月31日

GPホットライン 09-01 オーストラリア

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大荒れの開幕戦を制したのは、"新参"のブロウンGPだった。その勝利には、どんな秘密が隠れているのか。クルマ好きのエディター・羽端恭一さんとスティンガー編集長が、裏舞台をズバリ診断する。

◆デビュー・ウインの謎
羽端恭一(以下羽端) ブロウンが勝って、コングラチュレーション!ではあるんだろうけど。でも、テストもろくにできなかった......らしいチームがグランプリに勝ってしまうというのは、なんか、釈然としない!(笑)。
[STINGER-山口](以下[STG]) これにはいくつか、理由があって――。
羽端 というと?
[STG] ひとつは、ブロウンGPが前身のホンダ時代から、2009年のレギュレーション変更をターゲットにして、精力的な開発を行なっていたこと。
羽端 それが忙しくて、08年はあんな成績だった?
[STG] それはいえるかも(笑)。でも、あの不成績は、わざとやってたという見方もありそうで。
羽端 え?!
[STG] ホンダを、やめざるを得ないような状況に追い込むため。
羽端 それは......。そうだとしたら、ちょっとすごいな!
[STG] イギリス人は、こと戦いに関しては、マジに狩猟民族としての本能を発揮するので。
羽端 しっかし! 好戦モードはいいとして、じゃ、その"戦費"はいったい誰がだしていたんだ?!......という気はするが。
[STG] そういう意味で、準備万端整っていたのがブロウン。それと、シンプル志向というのも大きいと思います。
羽端 たとえば、 KERS は使ってないとか?
[STG] そう。これは大きい。 KERS については別項で解説しますが、今回の KERS 組は、あのフェラーリを含めて、みんなズタボロ......でもないけど(笑)。唯一、ハミルトンのマクラーレンが、トゥルーリ+トヨタのペナルティで3位になったのが最高位。でも、ブロウンには全然とどかなかった。

◆驚異のポール・トゥ・ウイン
羽端 歴史では、デビューしたチームがいきなり優勝なんてことはあったの?
[STG] 1977年のウルフがそうだった。2年後にフェラーリでチャンピオンになるジョディ・シェクターが乗ってね。でも、ブロウンは新チームといっても、中身はそっくりホンダですからね。
羽端 それにしても、誰かが壊れたとか、展開に恵まれてとかいったハナシではなくて、ポールを取ってそのまま勝利という、強~い勝ち方ですよね。こんなこと、シビアなF1ではあり得ないというか、あってはならないような気がする(笑)。
[STG] いや逆に、シビアだからそうなる、ともいえるのでは。
羽端 ......というと?
[STG] さっきも言ったように、今年は大幅に車両規則が変わった。そのなかでも、とくに KERS は大きなテーマ――。
羽端 ブロウンは、そんなことに目もくれずに、他に集中した?
[STG] そう。でも、それにしても3月までテストもできず、チームは空中分解か、といわれていたことを考えると、やっぱりちょっとビックリですね。
羽端 まあシーズン開幕戦で、それも新レギュレーションでの初戦ですからね。......あ、こういう意外性を否定してるわけではないですよ。観客としては、むしろ大歓迎。ただ、あまりにフシギでね、ちょっと、突っかかってみたくなった!(笑)
[STG] これは毎年のことなんだけど、開幕戦をうまくやろうと思ったら、欲張ったテクノロジーを『諦めた』クルマつくりをするのが正解。というのは、目標設定を低くしておけば、完成度を高くできるから。
羽端 それが今回のブロウンか。
[STG] 1988年に、プロストとセナのマクラーレン・ホンダが、16戦で15勝するというシーズンがありました。今年のシーズン前のテストで、ブロウンGPが走ったのを見た元ホンダのエンジニアが、「1988年のシーズン前のテストとそっくりだ」といっていた。ブロウンGPのスピードがホンモノだったということ。その彼は、「もしかすると、このまま連戦連勝かもよ」といってる。
羽端 タイヤ・エンジニアも、開幕戦でのブロウンは、すごくキレイにタイヤを使ってる、力を残してるとコメントしてますもんね。

◆なぜ、ブロウンは......?
[STG] 去年のホンダF1チームと今年のブロウンGPの違いは、まず、エンジンね。
羽端 でも、メルセデス・エンジンで、速くないところもあったよ!(笑)
[STG] ちょっと待って!(笑)ホンダのエンジンは、音源解析によると、他より20馬力少なかったとかいう噂もあった。そうだとすると、今年はパワーアップされていることになるよね。
羽端 うんうん......。
[STG] だからといって、そう、ご指摘のように、エンジンは何も決めない。もっと重要なのはシャシー。
羽端 でも、ターボ時代、第ニ期のホンダはエンジンでレースに勝っていた?
[STG] それは、ちょっと別。それをいうなら、1300馬力もでていたというターボ・エンジンは、ホンダの技術がテンコ盛りになっていた素晴らしいエンジンで――。だから、シャシーがアンダーステアだろうが何であろうが、パワーで押し切れた。でも現在は、2400ccで、規制が厳しくなっている。エンジンの差は、そうそう大きくはでてこない。
羽端 でも、前よりはやっぱりパワーがでていて、そして車体が......。
[STG] それもあるけど、それより、チームから日本人が抜けて、体制が明確になって、ロス・ブロウン以下がきちんと力をだせるようになったことが大きいと思う。
羽端 え、でも、ホンダ時代だって、ロス・ブロウンはチーム代表だったでしょ?
[STG] たしかに。でも、それは2009年に備えて、ですから――。
羽端 ......で、その予定通りの2009年がやってきた。それなら、ホンダのままでも行けたのでは?
[STG] そうだったかもしれないけれど、でもたぶん、違うと思う。これは、誰がいいか悪いかとかそういった問題ではなくて、たとえば日本の企業は、人事異動があるでしょ。
羽端 とくにホンダは、3年くらいで(F1に関わる人を)替えるといってましたね。多くの社員に体験させたかったのか――。
[STG] そうなると、どうしても、自分の任期の中でのことを考えざるを得ない。でも、たいていのことって、レースだけじゃないけど、3年や5年で成就する問題じゃないことが多いでしょ。任期中に効果がでなくてもいいから、その後――自分が異動したあとのことをやっておく。そんな奇特な人は、なかなかいませんから(笑)。
羽端 たしかに!(笑)
[STG] ここ数年のホンダF1チームは、『誰のチーム』なのかってことがまるでわからなくなっていた。以前なら、1960年代の第一期は本田宗一郎さんと中村良夫さん。1980年から1990年代の第二期は川本信彦社長と桜井淑さん。このときはエンジンだけだったけれど、でも、明確に責任者が見えていた。しかし、第三期は、"誰がやってるか分からない"状態だった。

◆誰のチームかが、はっきりした!
羽端 でも、そういうこともあって、ロス・ブロウンを呼んだのでは?
[STG] でもね、たとえば「任せる」といっておきながら、実は「大丈夫か」と横から口をだすとか。
羽端 ああ、そういう意味でのモチベーションね。
[STG] ホンダと離れた現状のブロウンGPは、270人のレイオフが行なわれて、残ったスタッフも、給料は軒並み10%下げられたといわれてます。モチベーションでいえば、ゆえに高まるということもある。だから、そんな状況であることを考えると、メルボルンでの彼らの成果というのは素晴らしかったと思いますね。
羽端 日本人がいなくなって......?
[STG] 仕事がやりやすくなった......のだとしたら、ちょっと複雑ですけど。
羽端 そうですね......。これは、日本人が彼らの文化と、どう付き合うかといったところまで行く問題かもしれない。
[STG] 日本の「会社組織」のあり方は、生産車作りには向いているけれど、「戦い」には不向きということかもしれない......。
羽端 まあまあ、そう結論を急がずに(笑)。
[STG] トヨタは、山科(忠チーム代表)体制になってから、任せることと、任せたことに対して口出ししない、責任はオレがもつから精一杯やれ、ということを徹底しているようです。だから、これは少し違うものになるかも。
羽端 あ、それはトヨタの市販車開発における「チーフ・エンジニア」制度って、もともとそうですよ。「上」は、いったんコイツにと決めたら、その担当者に存分に「暴れさせる」システムと風土が社内にある。
[STG] う~ん、F1はそこが微妙に違うと思います。だって、それが正しいならとっくに勝ってるわけだし(笑)。問題は、郷に入れば郷に従えってことかもしれないですが。資金と技術と頭脳はあるわけだから。
羽端 あと、政治力は......?
[STG] だから、リヤ・ウイングを咎められたりするのかも(笑)。

【2009年3月31日 メルボルン~西湘 Hot Line】




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