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2009年4月30日
GPホットライン バーレーン篇 その2

もう一度、"あの日曜日"を考える
◆エアライン、その"使いこなし術"とは?!
羽端 バーレーンからの長旅、お疲れさまでした。
[STINGER/山口](以下[STG]) いや、まだ途中、上海なんですよ。
羽端 あれ、上海で給油とか? エアラインがそうなっている?
[STG]これは話すと長くなるんだけれど、簡単にいうと、今回は拠点を上海にしたので。
羽端 えーと、中国からバーレーンという連戦ですよね?
[STG] ......なので、一端日本に帰ると、再び上海か香港を経由するか、もしくは関空からじゃないと中東には行けない。そこで、ホテルが安い上海に滞在して、そのままバーレーンに行ったので、その帰り道です。
羽端 そういえば、開幕戦から第2戦も"行きっぱなし"だったような?
[STG] 今年は、開幕戦からの5週間に4戦というムチャクチャな(笑)スケジュールで始まったので――。オーストラリアとマレーシアの連戦を、成田~クアラルンプール~メルボルン~クアラルンプール~成田とつないだ。それで、早めにチケットを買っておいたので、なんと、メルボルン単純往復より安かった(笑)。
羽端 おお! そんなことがあるんだ。
[STG] 組み合わせでいろいろ。旅行代理店では、たぶん私はブラックリストに載ってると思います(笑)。普通考えられないような方法を言い出すので。ブラジルからの帰りをフランス経由にしたこともある。
羽端 どうしてそうなるの?
[STG] GPXという速報誌をやっていた時代は、フィルムを日本に運ぶ関係で、とにかく早く日本に到着したいから、「日本到着が一番早い便」を基準にして逆算する。極端な話、東京から名古屋に行くのに、フライトの時間によっては、一端、札幌に行った方が結果として早く着くようなときがある。
羽端 なるほどね。
[STG] それに実は、地球は丸いので、ブラジルに行くのに、アメリカ経由もヨーロッパ経由も、所要時間はそう変わらないんですよ。バーレーンも、ヨーロッパ経由という行きかたもあるけど、今回の上海拠点計画(笑)は、ベストだったと思います。乗り遅れたりしなければね(笑)。
◆明暗を分けた? 第2スティントのタイヤ選択
羽端 さて、そのバーレーン・グランプリですが、直後のホットラインでも、アタフタという感じで(笑)喋りましたけど、その後、いくつか思うところがあって......。
[STG] まぁ、あれはレース直後の興奮している状況で(笑)。
羽端 まあね、それで、タラレバを弄ぶつもりはないんだけど、でも、やっぱりタラレバかな?!(笑)。
[STG] タラレバはタラレバですね。レースにタラレバはない、とよく言うけど、実は、タラレバを分かったように喋るって一番楽しい(笑)。
羽端 いや、当事者がタラレバで嘆いてるとしたら、それはマズいと思いますよ。でも、レース後の新居さんの会見にしても、それはやってないから、その意味ではリッパだった。
[STG] 木下さんは、他のチームメンバーの反応と違って、「勝てたのに!!」と怒って、記念撮影を拒否した!らしいですから。
羽端 ......というわけで、部外者というか、われわれのようにファン・サイドにいるものは、いくつか、タラレバみたいなことをいってみてもいい?
[STG] イエス! 部外者の特権ですから(笑)。
羽端 それで、あのGPでの「トヨタの戦略」で、一番問題になっているのが第2スティントでのタイヤ選択ですよね。
[STG] ひとつは、そうともいえますね。タイヤについて、ちょっとまとめておくと、ひとつのグランプリについて、4種類のコンパウンドから、ブリヂストンが2種類を供給する。大雑把にいうと、硬いのと柔らかいの、ですね。それで、硬いと長持ちするけれど、暖まりに時間がかかり、そして、そもそも硬いのでグリップ的には不利。一方、柔らかい方はその反対で、グリップがいいけれど長持ちしない。
羽端 フムフム。......で、その2種は、レースでは、必ず使わなければいけないわけですよね。
[STG] ですね。で、ここで問題なのは、天候などの気象条件とか、路面の状況で、2種類のタイヤの特性というか使い方による差が、微妙に変化してくる。
羽端 そのへんを、ブリヂストンの浜島裕英モータースポーツタイヤ開発部長が、いつもていねいに説明されてますよね。
[STG] 浜島さんのタイヤ・トークは、説明がていねいだから話が深くて、すごく面白い。
羽端 そして、あのバーレーンでは、長めに走る予定の第2スティントで、トヨタは硬い方のタイヤを選択し、それによってタイムが落ちて......。
[STG] ですね。でも、そうするかどうかは、その時の状況から判断しているわけで、結果は失敗だったけれど、間違いだったとはいえない。
羽端 はいはい。それでね、それがトヨタの失敗だったという面は、もちろんあるんでしょうが、もうひとつ、べつの視点から見た"あの日曜日"というのもあると思うんです。そうやって日曜日を迎えて。......で、ここで"もし"ですが(笑)、もし、ブロウンやレッドブルの立場だったら、あの日曜日にどうするだろう、と。
[STG] それは、ポールではなかったチームがどうしたか、ということ? でも、グリッドで、真ん中より前の方にいるチームは、どれも"勝ちに"行っている。だから、「ポールとそれ以外」という分け方は、あまり、しない方がいいかも。
羽端 あ、そうか......。ただ、"あの日"のポール・シッターが、あまりにも硬直していたので、そんな分け方をしてみたくなったのでした(笑)。
[STG] あの日にトヨタがやったことは、獲得したフロントローを「守る」というレースですね。
羽端 ブロウンやレッドブルは、予選でも"速さ"ということでは負けていて、そしてスタートしてみても、やっぱりトヨタの2台は速くて......。
[STG] いや、レッドブルのリリースで、クリスチャン・オナーチーム代表はこう言ってます。「トヨタの2台はアグレッシブな作戦だった」と。つまり、燃料を軽くして予選を"取りに"いった。
羽端 スタート時の重量は、トヨタは軽かったですね、2台とも。つまり、最終予選のQ3では燃料を少ししか積んでなかった。
[STG]......です。だから序盤に速かったというのは、ある種"道理"なワケですよ。もちろん、以前と違っていまのトヨタは、単に軽い=速いじゃなく、本当に速くなっていますけどね。
羽端 フムフム。そうすると、フロント・ローではなかったブロウンとレッドブルが、ポールだったトヨタの速さに対抗すべく、"ダメモト"も含んで、セカンド・スティントでソフトタイヤを選択したというのは、ちょっとハナシをつくりすぎ?(笑)
[STG] まあね(笑)。それともうひとつ、ブリヂストンの浜島さんが、トヨタのマシンを"不思議"と言ってます。燃料が軽い時は速いけれど、たくさん積むと遅くなる。これは、物理的には当然の理屈なんだけれど、トヨタはその"落差"が大きい、ドライバーのせいかマシンのせいか分からないけど、と――。
羽端 ああ、読みました、それ。
[STG] だから、重い燃料にならないようにしたい。......ということは、スティントを短くしなくちゃならない。
羽端 そういう宿命で......。さらには、ブロウンやレッドブルは、ソフト・タイヤの使い方に自信があったとか、ロングも行けるとか、そうしたデータ的な裏づけがあった?
[STG] レッドブルは、そんなにタイヤに"やさしい"マシンではないですけど。でも、総合的にいって、ソフト→ソフトで行けるという判断だったでしょうね。
◆レースにおける「ギャンブル」とは何か羽端 でも、もともと2位や3位だったから、"ギャンブル"も含んだ作戦ができた、ということはないですか?
[STG] うーん、そもそも、何をもってギャンブルというか――。例えばちょっと古い話ですけど、こんなのがあります。
羽端 なになに。
[STG] 1992年にドニントン・サーキットで行なわれたヨーロッパGP。雨のレースで、セナが圧倒的な走りを見せた。相手はアラン・プロストのウィリアムズ・ルノー。マシンのポテンシャル的には、セナは確実に負けていた。
羽端 でも、勝ったのはセナ?
[STG] そうです。レースは雨になったんだけど、そのときセナは、完全ウェット・セッティングだった。
羽端 ウィリアムズのセッティングは?
[STG] ウィリアムズは、完全ウェットのセッティングにはできない。
羽端 え、なぜ?
[STG] 雨が降るという確証はなかったから。ウイリアムズは、晴れたら勝てる。セナのマクラーレンは、晴れたら勝負にならない。だから、雨に賭けるしかない、というか"賭けられる"。......で、結果として大雨になった。ウィリアムズは、晴れなら勝てるので、中途半端なセッティングにしかできなかった。だから、土砂降りではどうしようもなかった。
羽端 なるほど。弱いからこそ徹底して「選べる」ということですね。
[STG] そういうことです。だから、レースで「ギャンブル」というときは、運を天に任せるとか、何も読めないまま宝くじを買うとかではなくて、「果敢な選択」を行なうことと解釈した方がいいかも。今回も、そうした「選択」として、ブロウンはセカンド・スティントでもソフトを選んだ。
羽端 一方のトヨタの戦略、第2スティントはハード・タイヤで長くというのは、堂々たる「正攻法」というか、とってもアタリマエのプランで......。
[STG] 状況は少し違うけれど、1992年のウィリアムズみたいな、といえるかもしれませんね。
羽端 なるほどね。でも、ポールから、それも"ダブル・ポール"(笑)みたいな状況から、「正攻法ではない」ような作戦を採ったら、それこそ、おかしい。だから、トヨタのあの選択は「戦略上のミス」とはいえない?
[STG]......と思います。
◆もし、予選がトヨタのワンツーではなかったら?!
羽端 では、ここで"もし"ですが(笑)。もし、トヨタのグリッドが3列目だったら? その場合は「正攻法」以外の作戦も、いくつか考えただろうし、そして実際の日曜日の現場でも、そんな「奇襲」のうちのいくつかをトライするようなレースをしたかもしれない?!
[STG] ......ですね。ただし、まだ経験というか、場数というか、トヨタの場合、そこまで行けてないかも。いまのトヨタに一番必要なのは、「この位置にい続けること」だと思います。そうしているうちに、いろいろ試せる余裕ができてくる。
羽端 あのグランプリは、トヨタの失敗というより、ブロウンやレッドブルの"ダメモト"も含んでの作戦が、結果として見事に当たった、と。
[STG] ブロウン代表は、作戦参謀として超一流ですからね。レッドブルも、元々い"イケイケ"のレースが似合うチームですから。ある意味、二つとも、"守り"という言葉が一番似合わないチームですから。
羽端 バーレーンでのトヨタは、予選が、あまりにもカンペキすぎた。そして、ポールを取ったがゆえに、それもワンツーであったがゆえに、逆に"不自由"になった。そのため、戦略の幅が狭くなり、結果として「勝ち」が来なかった......。
[STG] う~ん、そう言っちゃうと元も子もないけれど、ポールは取れるけれど、まだ勝てる力がない、ってのが正しい解釈かな。

そうそう簡単には勝てないね。
羽端 ただ、第一スティントでの状態を見て、その結果でセカンド・スティントのタイヤを決めるということにしていて、そういう戦略で――。そして、実際にそのときになって、「あれ?! 今日はソフトでも長く走れそうだ!!」という判断を、現場がすばやくしなかった......とすれば、この点は「判断」におけるミスだったかも、とは思います。
[STG] 木下さんは、この点で怒ってるワケですね。でも、表彰台ですから。ずいぶん贅沢になった(笑)。いまのトヨタは、表彰台でも怒れるところに来た、といことですね。トヨタは確実に変わってきたと思います。というか変わろうとしている。これは、今までのトヨタにはなかった大きい変化です。
羽端 そうですね、3位をくやしがるチームですもんね。でも、ポールだったから勝てなかった......とすれば、うーん、「レースに勝つ」ってむずかしいなぁ。
[STG] もうひとつ、喜ぶのは最後、というのがレースの王道です。途中の予選であまり喜んじゃうと、エネルギーが抜けちゃうんです。
羽端 ああ、そうですね。グリーンにオンしただけでは、バーディにはならないので(笑)。
[STG] いくら短いパットでも、入るまでは、スコアじゃない。でも、繰り返しになるけど、「この位置にいること」が大切と思います。グリーン上での(笑)経験ってやつですね。まぁ、見ている方は好きなことを言えるんですが。
羽端 パー・オンはしてるんですよねえ、あのチームは。でもバーレーンでは、ブロウンに、先にロングパットを決められちゃったな!(笑)
[STG] そして、彼らは、パッティングしやすい場所にグリーンオンしていた・・・!!

そうそう簡単には勝たせんよ。
GP_Hotline バーレーンGP その2 西湘 - バーレーン帰りの上海
ニュースの深層 2009年4月30日 07:37
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